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zoom RSS 愛するという事〜演奏後記・藤原歌劇団コンサート「マスネ特集」〜

<<   作成日時 : 2012/12/12 00:30   >>

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今年の冬は本当に厳しいですね。


日本各地

豪雪や吹雪などで
いろいろな災害に見舞われているところも。

今日は雪山での辛い事故のニュースもありました。


自然を前にしては

やはり人の力はちっぽけなものです。


これから年末にかけて
人の移動も激しくなると思いますが

レジャーにしても仕事にしても
お出かけの際には

どなたさまも
丁寧な準備と用心を怠らないようにと

心より願います。。。



さてそんな先日

歌って来ました。


12月7日

藤原歌劇団作曲家シリーズ3「マスネ」特集



当日は
午後17時頃に少し大きな地震もあって

私達がいた杉並公会堂の小ホールも
地下二階でしたがかなり揺れました。。

コンサートの開催はどうしたらいいかとか
これは余震なのかとか

一瞬のうちに
皆の頭をいろんな思いがよぎりました。。


結果的に
その後は大きな揺れもなく
コンサートも無事開演して

このかなりマニアックな企画内容にも関わらず
沢山のお客様にご来場いただきまして

本当に本当に
ありがたい事でした。


ただ、そのかわり?

今回はハプニングが。


伴奏者の楽譜が
急に見つからなくなったり

照明の操作ボードの電源が急に落ちて
舞台が真っ暗になったり(?)

なんだか。

いろいろありました。


お客様には

暫くお待ち頂く場面もあって
申し訳なかったです。


もっとも

ピアニストが譜面を探しに行く間

某テノールさんは
舞台上でスクワットをして
お客さんの笑いを取っておりましたが(笑)。


なので。

その辺も含めて
印象深いコンサートになっていればいいなぁとは思います。

って、そりゃ調子良すぎだわね(−−)。

・・すみません。



「マノン」
「ドン・キショット」
「ウェルテル」
「タイース」

という四本のオペラのハイライトという事で
かなりの内容の濃さでしたね。

私は出番が一番最後だった事もあり
前半2作品の合間のナレーションもやらせて頂きました。

これが中々緊張しました・・・。

何しろ全体量が多いので
なるべく短く端的に説明しつつ
作品の世界観が伝わるような喋りって
難しいですよね。

しかも堅苦しくなってもいけないし。

お風呂入りながら推敲したりして
何度も原稿書き直しましたけど。。

皆さんの素晴らしい演奏がありましたから

それを邪魔せず
もっともっと引き立てるような。

内容もしかり
声のトーンや話し方しかり
もっといい表現が出来たかもなぁ・・と反省中です。



さてそれで

肝心の歌ですが。

いつもダメなとこいっぱいですけど
それにしても今回はかなり苦戦したと思います。

同じマスネの音楽ですが
先日歌った「マノン」に比べて
なんというか「音楽」がもっと濃くて強い感じ。

特にタイースが
信仰の喜びの中死んでいく最後の二重唱は
音楽もどんどん高揚していきます。

そこに自分が負けちゃいけなくて
どこかで冷静に自分を制御しないといけないんだけど

これがやっぱり難しい。。

ミカエラ歌ったときにも感じた似たような感触です。

まだ「音楽」に負ける感じ。


本当は

主導権を握るでもなく
どちらともなく自然に寄り添える状態

になれたらと思うのですが。


これは

やはり心の成長と共に
乗り越えていくべきところかなと思いました。



さて。


この秋は「マスネ」という作曲家の作品に
ずっと触れてきました。

今回の4つの彼の代表作もそうですけど。


なんかこう。

どの作品も何とも言えず切ないですよね。。


まぁ勿論。

オペラに描かれる悲恋なんて
いつもそうだとは思うんですが。


思いが通じるのに一緒になれないとか

通じたかと思えば死んでしまうとか

気がついた時には手の届かないものになっていたとか


詳しいお話の内容は今説明しきれないですけど




男と女って

結局すれ違う。


100回のキスをしても

1000回の抱擁があっても

結局それは一時の繋がりで


どんなに望んでも

悲しいかな

結局一つにはなれないもの。


どんなにお互いを求めて

お互いを思い合っていたとしても


それが通じ合うとは限らない


求める愛情はいつも報われるとは限らない。

むしろ報われない事の方が世の中の常だ。


そんなこと言われてる気になります。




ドゥルシネもシャルロッテも
心の奥で求めてる人はきっと

ドン・キショットであり
ウェルテルなんだろうけど

その愛を受け入れることが出来ない。

本人の意思とかじゃなくて
彼女らはそうせざるをえないわけです。

ドゥルシネとドン・キショットの二重唱なんて
その旋律が優しければ優しいほど
聴いてるとほんとに胸が締め付けられる。


アタナエルに至っては

多分ホントは初めからタイースに惹かれてて
「世の中を浄化する為に」とか大義名分掲げて
屈折した愛情の表現しか出来なくて

結局そんな自分に苦しんで
やっと真直ぐに彼女を求めようとしたら
もう彼女は手の届かないところに行ってて

息を引き取った彼女の足元に
一人孤独の中取り残される姿なんて

信仰すら否定してしまった彼が
その先どうやって生きていくのかと思うと
辛すぎて見ていられない。

ああ。

もう人生って報われない。

って気持ちになるんですけど。



ただ。


今回タイースを歌ってて思ったのは。

マスネはそれでも

救いはあるんだよ

ってどこか言ってるような気がしました。



タイースは

勿論死んじゃうんですけど
でも物凄く幸せに死んでいくんですよね。

信仰に目覚めて
今までの自分の娼婦としての罪が許されて

って事も勿論あるんでしょうが。

私はなんとなく

彼女がアタナエルへの純粋な愛情を
自分の中に感じる事が出来たことが

彼女を救い
彼女を満たしたのではないかしらと

思うんです。

彼女はずっと愛に飢えていて
つかの間の、偽りの愛情であると分かっていて
それを憎んでいても

そこにしがみつくしか
その渇きを癒す方法を知らなかったし

本当に自分を愛してくれる人を
きっと求め続けていたんだろうけど

アタナエルに出会って
彼と苦行を共にして

sois beni

「あの人に幸あらんことを」

って心から呟くんです。

このシーンのこのちいさなアリアの
何て美しい事かって思います。



多分人は

誰かから求められたり
愛されたりすることで

満たされる訳じゃなくて

本当は

誰かを求めて
ただ純粋に愛する事で

満たされる。


身分や富や
若さや美しさや
人種や宗教や

そういうものではなくて

ただ一人の人として
何の条件でなく

魂が呼応して
純粋にその人の幸せを
心から願える

そんな人と出会えることの
素晴らしさ。


そこに救いがあるはずだ。



って言われてる気がしました。




マスネの音楽は

美しいが軽くて流麗過ぎて

耳触りはいいが問題の本質に達していない

・・みたいな感じの批判を受ける事もあるそうです。


でも私は好きですね。

魂の奥底をグリグリつかれるような音楽はスゴイと思いますけど。

マスネの音楽は、

重たく、或いはシニカルなテーマを扱っていても

常に美しいです。

私はそこに救いを感じるし、

人間への優しさのようなものを感じます。



人生は難しくて

恋をしても報われない事ばかりで

男と女は結局分かり合う事はないかもしれないけど

それでも

人を求めて

人を愛する事は

こんなにも素敵で

美しい事なんだよ


やめちゃだめだよ


って言われてる気がします。




衆議院選を前に

FBでもツイッターでも

色んな言葉を目にします。

なんとなく、

世の中が殺伐とした方向に行ってしまうのではないかって

不安に駆られます。。


社会情勢が不安定な時に

音楽なんてっていう事もあるとは思いますが

少なくとも私達は

こうして演奏の機会が頂けて

誰かに聞いて頂ける状況にあります。


私達が出来るのはきっと

「心」の大切さを伝える事

「人を愛する事」の空しさと悲しさと

そしてその向こうにあるその「素晴らしさ」を

伝えていく事なんだと思います。


そして

それがちゃんと伝えられるような演奏を。




そんな訳で今回も

この長いブログをここまで読んで下さった方をはじめ(笑)

素晴らしい共演者・スタッフの皆様

お世話になりました全ての皆様と

会場にお越し頂いた全てのお客様に

心よりの感謝を。






さて。

週末はメサイヤ。


気持ちを込めて!


画像


タイースの衣装はこんなでした。うーん・・やっぱり顔とドレスが合ってない気がする・・・。


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